俺の元カノは、大学サークルの後輩。ただ、俺の出た大学は都心にあって、女子大とか専門学校とかの子も結構いて、元カノもそんな一人。つきあって4年、自分が就職して3年目にそろそろ結婚しようとなって、とりあえずお互いの両親に紹介し合い、結納の日取りを決め、指輪を選んだりしてた。
そんな順調だったある日、元カノから、元カノの住む沿線の某駅前のファミレスに呼び出された。行った先には元カノが知らない男と待っていた。
83: :2016/10/16(日) 14:45:26.72 ID:
後で彼女の父親から謝られた際に聞いたのだが、本命は中高までは普通だったが、大学受験で何浪もして挫折、そのままアルバイトとかをしていたとのこと。
元カノも関係を続けてはいたが、さすがに結婚相手にはできないと思い、平行して俺とつき合って、結婚も俺とすることにしたらしい。
ところが、彼女の結婚の話を聞いて、この男が突然やる気を出して、大学は今更無理でも、就職はちゃんとしようとして努力、公務員試験に合格っていうのがその時の話。
それでやっぱり一番愛している彼と結婚したい、彼は私のために努力してくれた、だってさ。
男は俺に詫びを入れるでもなく勝ち誇った顔で「間に合った、ぎりぎりセーフ」とか言ってたので、殴ろうかと思ったが元カノに止められた。
本当に私を好きならこのまま分かれて許してと。打ちひしがれてファミレスを出て、帰りの駅のホームで泣いた。
結納とか式の費用は両家で折半する約束だったので、せめておその分をお詫びに渡したいと言われたが、それを貰ったら益々ミジメな気分になるだろうし、もう、できるだけ早く忘れたいと思いお断りした。
彼女を奪い返すとか、復讐とか、そういう考えは全く浮かばなかった。
俺の両親も怒りまくったが、一方で、結婚前に本性が判ったのが不幸中の幸い、これを次に生かすことが大事って感じで割り切ってた。
これ以上こだわると情けない息子が更に情けなくなるってのもあったろうし、俺がまだ若かったしね。
その後は、できるだけ早く忘れたいと思っていたが、結構苦労した。
突然、暗い怒りが沸いてきたり、逆に気力が抜けたりして、仕事でも勤務態度が悪くなったということは辛うじて無いにしろ、激ヤセして表情とかが荒んでたらしく職場でもかなり心配された。
そんな状態がしばらく続いていた時、海外への転勤を言い渡された。
早くからうちらの業界は、海外展開されて来ていたんだけれど、当時で既に完全に地産池消になっていて、商売相手が出て行った先に追いかけて行かないと商売にならなくなっていた。
心機一転するためにも行ってこい。5年で必ず戻してやるからと上司に言われ、荒んだ心で別にいいです帰って来なくても、とか言って承諾した。
最初は日本人は避けたいと思ったんだが、おまえの歓迎会だとか言われて仕方なく日本人の会合にも参加した。
メンバーの多くは爺さん婆さん。大昔に移民して来ていた人たちの子や孫。県人会だとか同窓会的なノリだった。自己紹介の時に、出身地を聞かれて答えたら先祖の地の同郷が居て驚いたりした。なんか歓迎されて、昔の苦労話とか聞かされた。
最初は適当にあいづち打ってたりしてたけど、なんか癒されて、途中から熱心に聞き入ってた。仕事関係でもお世話になってる部分が少しあったので、その後も顔を出すようになって、いつのまにかとけ込んでて、こんなとこまで流れてきたけどやっぱり俺はニホンジンなんだなーとか思ってた。
その時はもうすっかり立ち直ってたんだが、まだ女性不信というか女性関係で自分に自信がもてなかった。
それで正直にその事を説明してお断りしたんだが、それでもリハビリもかねてみたいな事を言われて、お世話になっている人にそこまで勧められれば、断れずに一度会うこととした。
会う場所は、おしゃれな感じの日本食レストラン。
相手も日系人だと思ってたんだけど、待ち合わせの時間に現れたのは、碧い目をした女性。
あの国にはいろんな人種が文字通りいり交わって住んでいる。驚きと考えの狭さが恥ずかしいのと、自分の目の前の女性の笑顔がまぶしのとでその時は赤面してたと思う。
彼女は、爺さん達の縁戚の家の嫁の連れ子で、日系人の家庭で育っている。最初は本当にギコチなくて、またひどい目にあうのが怖いけど、相手がどんどん好ましく感じられてきて、彼女もなんか気長につき合ってくれて、なんだかんだでこの3年後に、帰還辞令が出た俺と一緒に日本に来てくれて、同時に嫁にもなってくれた。
でも、ちょっと表情が読めない冷たい感じから、突然、ニカッと笑うそのギャップと、溢れ出る健康的なオーラと言うか雰囲気が俺にはとても魅力的に感じた。
連れて帰って、嫁は俺の両親にもすぐ気に入られた。
日本人の生活様式には馴染みがあるし、和食どころか、俺の母親でも作らなような田舎臭い煮物なんかもさらっと作ったり、余興で歌う民謡のワンフレーズがえらく上手かったりして、格闘技好きの弟からは兄嫁はグレイシーとか言われてた。
日本での二人の生活は公私ともに平穏に続き、子供にも恵まれ現在に至る。まさに人生万事塞翁が馬。でも例の元カノ関連で修羅場みたいなのが1回だけあった。
披露宴は俺だけ、2次会は嫁同伴で参加したが、その2次会の会場に元カノが現れた。
二次会が始まる少し前の時間帯、会場の出入口付近のソファーで嫁を待っていると、現れたのは嫁じゃなくて元カノ。
突然現れて当然のように俺の隣の席に座りやがる。
しばらく困惑しているとポツポツと元カノが話し出す。俺が日本にいない間、寂しかった。
自分はまだ独身でやっぱり本当に愛しているのは俺で、俺とつき合ってた頃の自分が一番輝いていた。それでやり直したいと。
幼なじみの彼はどうしたと聞くと、あんなやつどうでも良いとか言って少しキレる始末。
開宴の時間が迫り、参加者が集まりだしてギャラリーも沸いて来たので、話を終わりにするため自分は既に結婚していると言おうとした時、
嫁がすっと現れて俺を挟んで元カノと反対側に座る。
突然現れた見知らぬ外人女性に怪訝な顔をして、誰この人と訪ねる元カノ。○○のカナイです。シュジンがいつもオセワになっておりますとか、昭和の主婦みたいな挨拶をしながら俺に腕をからめる嫁。
同時に嫁ですと俺。
一瞬、絶句した後、飛び上がるように立ち上がって、モゴモゴと何かいいながらダッシュで会場から逃げ出す元カノ。
ガッツポーズのギャラリー。
後で聞いたんだけど、元カノがサークル関係の人づてに俺が二次会に参加すると聞きつけ、無理やりに参加をして来たらしい。幹事は俺が結婚していることは話さず、恥でもかけば本当に懲りるだろうと、新郎新婦にも断った上で参加を認めたらしい。
2~3年ぐらいの勤務できる期間が決まっている公務員で、受験すれば大抵の人は合格するようなものだったらしい。
公務員なのは間違いないらしいが同時に期間工みたいなイメージなんだと思う。それが判って、結婚は流れたらしい。
幹事達は、俺の復讐にも一役買おうとしたらしいが、復讐どころか元カノのことさえもすっかり忘れていたわけで、そんなことより、せっかくの結婚式の二次会を修羅場で台無しにする気かって怒ったら、2次会は親族とかいないし、新郎新婦も了解済。
第一、あの程度は修羅場と言わないんだと。もっとも遠くから俺たち夫婦の仲睦まじい姿を見れば、その時点で諦めるだろうと予測していたとのことで、2次会前の嫁がまだ会場に来ていない時に接触があるのは想定で多少焦ったとのこと。
それでお詫びに次はおまえ達の日本でのお披露目会をしてやるって言われて即、断った。
先にも書いたけど、その後、子供も生まれて私生活ではほんと幸せ。
天使みたいに可愛い。仕事でまた嫁の故郷に赴任できないかなっと
密かな希望を持っている。
ベタだけど、やっぱり幸せになることが一番の復讐。
この記事へのコメントはありません。