｢お兄ちゃんと一緒にお風呂に入っちゃった～｣とか兄の話を毎日していたA子が事故で亡くなった。→Ａ子母からの話を聞いて全身に鳥肌が走った…

高校生のときに，友達に物凄いブラコンがいた．
その子(仮にＡ子としておく）は，少し性格がエキセントリック気味で，
感情の起伏が激しいところがあった．躁鬱気味というか･･･
でも，Ａ子と一緒に騒いで遊ぶ時はすごく楽しくて，学生生活の大半は
Ａ子と一緒にすごした．休み時間も放課後もいつも一緒だった．

Ａ子の話の中にはいつも，お兄さんの話が出てきた．
「昨日はお兄ちゃんに○○に連れて行ってもらったの」とか，
「このピアス，誕生日にお兄ちゃんに買ってもらったの～」とか・・・
とにかく，毎日毎日お兄さんの話を聞かされた．

お兄さんはＡ子が言う話によると(私は一度もお目にかかったことがなかった)
背が高くて，イケメンで，頭が良くて(某旧帝大の学生とか言ってた)優しくて～と，
何というか理想の男性のお手本のような人だった．
多分，だいぶ美化は入ってるだろうなーとは思ってたけど･･･．
とにかく，Ａ子はお兄さんのこと溺愛してた．

まあ，｢昨日はお兄ちゃんと一緒にお風呂に入っちゃった～｣とか，
｢昨日の夜は眠れなかったから，お兄ちゃんと一緒に寝ちゃった｣
とか言われた時は，正直ちょっと引いたけど……．たいていは
｢も～，Ａ子は相変わらずブラコンよねー｣とか言って，ふざけあってた．
というか，そんなかっこいいお兄さんがいるＡ子がうらやましかった，ずっと･･･．

その後，Ａ子と私は離れた大学に進学した．メールをするたびに
｢今度また会って遊ぼうね～^^｣と言ってたけど，Ａ子はサークル，私はバイトが忙しくて，
なかなか会えなかった．あとで物凄く後悔することになったけど･･･．

ある日，Ａ子が事故でなくなったという連絡が届いた．
交通事故らしい．連絡を受けて大急ぎでＡ子の家に駆けつけた．
お葬式のことは何というか記憶が飛び飛びで，とにかくＡ子がﾀﾋんだということが
信じられなかった．最初から最後まで，Ａ子の思い出が次々と
思い浮かんできて，涙が流れっぱなしだった．

でも，その日一番衝撃を受けたのは，その後のＡ子のお母さんとの話だった．

私がずっとＡ子の位牌の前で泣いてると，Ａ子のお母さんが話しかけてきた．
Ａ子のお母さんも憔悴しきった感じだったけど，私のことをすごく気遣ってくれた．
Ａ子が私のことを，一番気が許せる友達だと話していたと聞いたときには
また涙がどっと溢れてきた．

そして，私はお母さんにずっと気になっていたことを聞いた．
それは，Ａ子のお兄さんのこと．
あんなにＡ子が溺愛してたお兄さん．さぞかし落ち込んでるだろう．
でも，その話を聞いたお母さんは怪訝な顔をしてこういった．

｢Ａ子には，兄はおりませんが･･････あの子は一人っ子ですよ？｣

それを聞いたときの衝撃は今でも忘れられない．全身に鳥肌が走った．
それでは，高校時代Ａ子から毎日聞かされた，お兄さんの話はなんだったんだろう？
全部Ａ子の妄想だったのか，それとも･･･
もう，Ａ子に問いただすことさえ出来ない．