4人で降りて玄関へ向かう途中で横の駐車場からアイドリングの音が聞こえる
そっちへいくと車の中に先輩と嫁が乗っていた
瞬間、なんか一気に血が上ったんだけど察した弟が俺の腕をぐっと掴んだ
振りほどこうとした横をすごい勢いで弟嫁が車に行った
「なにしてんだよ嫁子!!」
なんか俺よりブチギレしてた
助手席のドアを開けて嫁を引きずり下ろす
直後にむかついた顔で勢いよく先輩が降りてくる
弟嫁と彼氏さんが先輩と言いあってるあいだ、俺は弟におさえられて近寄れず
嫁はうつむいたまま弟嫁に罵倒されまくってた
嫁は左手を右手で抑えて隠している
「指輪って結婚してたのかよお前」とか先輩は動揺してた
ここから弟嫁がさらにヒートアップ
罵声浴びせながら嫁の左手ねじり上げて確認したあと
「彼氏さんごめん、こいつ連れて帰りたいから帰りも頼んでいい?」
「もちろん。彼女が迷惑かけたみたいだし」
って弟嫁がいろいろぶったぎって彼氏さんの車に乗せ
5人で俺の家へ帰る
先輩はわけがわからないという顔でいたけど追ってくるようなことはなかった
嫁はうつむいて一言も発さなかった
家に着くと彼氏さんが「こっちも事情はっきりさせてくるからあとで電話する」と弟嫁に言って
俺に深々と頭を下げて帰って行った
ただ一番最初に声を発したのは弟嫁で
「俺くん、こんなのとは離婚したほうがいいよ」だった
俺は何かを聞こうとか何かを言おうとか思っても言葉が見つけられないくらい動揺してた
何かを聞こうとかいっても結局聞きたいのは全部だしそのなかで聞きたくないことだけが前面に出てくる
俺より先輩を選ぶと言われたら…がずっと俺の心をえぐってくる
結局何も言えず聞けずで時間だけが過ぎていく
そんな俺の様子を察してくれたのか弟嫁が嫁を詰めた
「何か言うことあるんじゃないの!?」
「指輪外して会うとか、もうその気しかないんでしょ!?」
「私、お義父さんにもお義母さんにも言うからね」
もっといっぱい怒鳴ってた
そのあいだ嫁はずっとテーブルの一点を見つめてた
下唇を噛みながらだったけど目は今までみたこともないくらい悲しそうな感じで
「嫁さん、スマホを兄貴に渡してくれないかな」
それを聞いて嫁がテーブルにスマホを置いた
でも俺は見れないんだ
もう怖くて怖くて嫁のスマホを手に取ろうともしなかった
「ロックは?」と弟嫁が聞いたら嫁は首を横に振った
そして弟嫁がスマホを見る
着信は俺と先輩以外無し
先輩とのメールも無し
ラインも無し
「消してる?」と聞かれたときも嫁は首を横に振った
先輩との通話は3回
最初の2回は着信、3回目は発信
実際連絡はこれだけだったと思う
一瞬嫁が顔を上げたけどすぐにまた目線をテーブルに戻した
どちらの家も遠くなかったから1時間もしないうちに互いの両親が集まった
嫁父も嫁母もすごい勢いで謝ってきた
嫁母は嫁よりもプライドが高そうな感じなのに何度も深く頭を下げて謝ってた
弟嫁は面識があったから気にせず嫁親にあれこれ話をしてた
「不倫より質が悪い」
この言葉が一番記憶にある
これが一番俺を苦しませる言葉だったから
結局嫁はずっと黙ったまま
発したのは「離婚はしたくないです」と一言だけ
行き場のない切なそうな顔をした俺の両親に嫁両親は頭を下げて嫁を連れて帰って行った
弟嫁がいなかったら結局なにもできなかったのが情けない
ここからは両親と弟と弟嫁と俺で話し合いに
いきなり離婚なんてことはさすがにないだろうと言ってた
実際、この時は俺もそう思ってた
弟嫁だけは離婚推しだった
弟は「自分のことじゃないから兄貴のことは兄貴が決めていい。結果だけ受け入れて家族として全力で接する」と
なんていうか何一つ即決できなかったんだよね
そうなる原因は混乱もそうだけど一番は変なプライドと未熟さ
下手に嫁しか女を知らずに結婚をしたから10代でラリってるのと同じ
永遠の愛を一人の女と~みたいなものに憧れ抱いたり理想の男はそういうものだとか
多くの選択肢からそれが最善と選ぶのではなくナンバーワンでオンリーワンと思い込むみたいな
その場では「離婚はしないと思う。ただ嫁と話し合いをしないことには」と言って両親には帰ってもらった
弟嫁からは「先輩とかのことは私がある程度動いて納めてみる。ただしアリバイつくろうとしたあの友達だけは追い込む。嫌いだし」
って言われた
帰り際「不安になったらいつでも連絡していいよ。弟と私どっちでもいいから」って今日初めての笑顔で言ってくれた
そしてみんな帰って一人になった
テーブルの隅でそれが鳴り出してさ
なんか大笑いした
モテなかった男があんな綺麗な嫁もらって
何も起こることなく平和に済むわけないだろって思って大笑いしてた
けどぼろぼろ涙こぼれてた
大笑いして大泣きしてた
いつのまにかカーペットの上で寝てて体が痛くて起きて
半日くらい寝てたのか、夕方近くに起きて麦茶飲んでた
すこしして玄関チャイム鳴って、出たら嫁と嫁両親だった
とりあえず家に入れた
嫁は真っすぐに俺の目を見て話を始めた
電話が来て舞い上がった自分の心があった
そこから何度か電話があったけど心が揺れるのが怖くて出なかった
それでも電話が鳴るから怖いのと揺れる心とで苦しくて一度会ってはっきりさせたかった
自分だけで解決しなければその心が嘘になるからと相談しなかった
指輪を見て俺くんに頼る心があってはそれも嘘になるからと外して会った
あなたを愛しているもう迷わない
箇条書きみたになったけどこんな感じ
いくらでも言い訳できるような内容
けど信じて欲しいと嫁、嫁両親から言われて受け入れたんだ
そしてスマホを返した
「これからもロックはかけないし見てもいい。やましいことはしない」
嫁はやっぱりまっすぐ目を見て言ってきた
その言葉も俺は受け入れた
嫁両親にはありがとうございますとすみませんを言って帰ってもらった
それからはまた普通の日が戻ってくると、このときは短絡的に考えてた
5日後に離婚したんだけどさ
つーか、この言い訳はないわーww
最低
ごゆるりと行てらさい
聞きたいことがあっても特に聞かずに我慢して懐の深い男を演じようとしてた
確か夜はしなかったと思うんだけど一緒のベッドで手を繋いで寝た
次の日、仕事に
ここからがやばかった
10分おきくらいに嫁が何をしているか気になる
かといってメールをするのはモテない男のすることだとか自分に言い聞かせるも
昼飯は喉を通らないから無理に詰め込んで午後の仕事
午後も相変わらずやはり嫁が気になる
まさか先輩と連絡をとっているのでは、とか
先輩が無理矢理奪いに来たのではないか、とか
とにかく仕事が手につかない
そういう時に限って仕事が終わらず帰りは10時すぎ
帰ってすぐ嫁の指輪をチラ見で確認
トイレも風呂も早く出て嫁の行動を気にする
たまたま義父から嫁に来た電話も聞き耳をたててしまう
ほんと器が小さいくせに捨てられたくないブサイクが見栄をはって強がっている状態
嫁のことは変わらず大好きだったんだよね
でもすべてが空回り
嫁は実家に荷物を取りに行ってて家にはおらずスマホを鳴らと寝室から着信音
このときは忘れて行ったらしいけどスマホを握りしめて葛藤したんだ
見るべきか見ずにいて理解と包容力のある夫になるべきか
そんなことをたしか悩んでいて、いつのまにか気を失ったらしい
気付いたら病院
廊下で倒れてカラーボックスに顔を打ったらしく額を切ったのと鼻血とで血が床に広がってたらしい
帰宅した嫁が救急車を呼んだそうで
ほどなくして意識が戻って嫁たちの顔が目に飛び込んだとき嫁に言ったんだよ
「信じようとしたけど、いい男になろうとしたけど…無理だ」って
そのときは嫁と親父と弟がいたのかな
「親指の爪噛みながら嫁さんにそう言ったときの兄貴の顔が死人みたいだった」って弟からあとで聞かされた
爪を噛むくせなんて俺にはない
今でも自覚はないけどこのときは鬱かなにかの一歩手前だったそうで
その横でモテまくる嫁をずっと見てきて
嫁のプライドの高さと気の強さをずっと見てきて
一緒にすごしてその強さに憧れたりもしてたんだろう
あの日の出来事は、初めて出会った日から積み重ねてきた時間を
俺と会う前から嫁が積み重ねてきた先輩を想う時間が上書したという判断を俺にさせ
一瞬で全てを無駄に思わせるには十分だったんだろうな
ここのスレとか浮気発覚スレとかでアドバイスしてくれる百戦錬磨の人たちから比べたら
ほんとチェリ男こじらせたガキみたいな器しかない俺にはとにかく無理だった
「離婚してほしい」
俺の言葉で初めて嫁が大泣きした
それ見て俺も泣いた
個室じゃなかったけどまわり気にしないで泣いた
分与とかもろもろを嫁は拒否
ただし再構築をさせて欲しいと
裏切られたと割り切れればいいけど俺自身変わらず嫁を好きだった
ただどうしても受け入れられなくて
俺の心のこともあって嫁は離婚に合意した
そこから1週間くらいだったかな
実家に俺と嫁、嫁両親、俺両親、弟夫婦と集まって話し合い
離婚したのになんでって言ったんだけど
嫁両親と俺両親は再婚前提で再構築への努力をしたいと
なんかいろいろと情報があったんだ
嫁友達の家から先輩と会い、最初は先輩の家で家族と一緒に話をしていたこと
それは先輩の家族からも確認済みだし時間帯の整合性もとれたこと
その後帰る帰さないで車に乗ってから数分後に俺らが到着
つまり体の関係をもつ時間は無しだったということ
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