彼をテーマパークデートに誘ったら渋られたけどゴリ押しで約束を取り付けた。当日、待ち合わせ場所に現れた彼を見て帰りたくなった…

※差別的表現多めです。お嫌な方は読み飛ばしてください。

社会人になってすぐのころ、彼氏ができた。
お恥ずかしながら初めての彼氏で、私は相当浮かれていた。
浮かれた私は、彼氏を某テーマパークに誘った。
本当に我ながらお恥ずかしい限りなのだが、一度テーマパークデートなるものをしてみたかったのだ。
彼氏には渋られたのだが（理由は結局語られず）、浮かれた私は半ばゴリ押しで、最終的に約束を取り付けた。

浮かれた私は浮わついたまんま当日待ち合わせ場所に行ったのだが、そこで私の浮かれ気分はあっさり死滅した。

待ち合わせ場所に現れた彼氏は、白いTシャツにラフなチノパン、そしてウエストポーチを付けていた。
深緑色のナイロン製で原色黄色のファスナーの差し色が眩しい、アウトドア用と言えば聞こえはいいが街中で付けるにはデザイン性が乏しすぎるドシンプルなウエストポーチを、女の子がファッションベルトでウエストマークするみたいに、キュッとジャストウエストで……。

「清潔ですね」としか言いようのないもっさり頭の彼が街中でウエストポーチをそういう付け方していると、申し訳ないがこれから作業所に出勤する知的障がい者の方にしか見えなかった。

「どどどど、どうしたの、その格好？！　いつもそんな格好しないじゃん？！」
「動きやすいように」
「ハア……」

ぶっちゃけこの時点でまあまあ帰りたかったが、私の趣味に付き合わせたんだしと思い直し、そのままテーマパークに向かった。

渋々テーマパークに来た割には、彼氏は上機嫌だった。
機嫌よく、
電車の中で「生活保護を受けてる人間が休日に電車に乗って遊びに行くとか、税金の無駄遣い過ぎて恥ずかしいよね」と想像力の乏しい持論を周囲に聞えよがしに展開し、
パークに着いたら着いたで外国人観光客のマナーの悪さを声高に語って外国人は自国に帰れと叫び、
移動中には、大学生の頃、友達とテーママークに来てキャストに絡んでガン無視されたという武勇伝(?)を披露してイキり、
かと思いきや、行列に横入りしてくる小学生に注意しようとした私を「ああいう手合いに注意しても意味ないから」と諫めるドチキンぶりを発症した。

未だにあの時以上に、誰かと一緒に居るのが心底恥ずかしくて苦痛だと思った事はない。
彼の言ってる内容も勿論きっついんだけど、それ以上に見た目知的障がい者の彼が差別発言を繰り返すのは、「鏡見てから人様を批判しろよ」という感想しか浮かばなくて滑稽だった。

結局、念願のテーマパークデートはお昼を食べたくらいで早々にお開きになった。
あまりにもしんどすぎて、とてもじゃないがナイトパレードまで粘る気力が湧かなかった。

家に帰り付いて一息つき、私は彼氏と別れたい気持ちでいっぱいになった。
だけど、一晩考えて、私にも悪いところはあったと思い直した。
テーマパークを好かない人間に、テーマパーク行きをゴリ押ししたのは宜しくなかった。
彼氏はテーマパークに行きたくない理由を言わなかったから私もしつこく粘って誘ってしまったが、そこは良くなかった。
彼氏としては、今日のデートのあのクソ対応は、二度とテーマパークデートに誘われないための防御策だったのではあるまいかと、恋愛経験の乏しい私は結論付けてしまった。

別れるのはもうちょっと様子を見てからにしよう。

そう思って別の日に彼氏に会ったら、海デートに誘われた。
誘ってくれたのに悪いが、私は海には行きたくない。
泳げないし、肌が丈夫じゃないから塩は辛いし、何より服を着てると隠れるけれど水着になると見える辺りに傷痕があって、水着になりたくないからだ。
その辺りを説明してお断りしたら、彼氏が顔を歪めて笑った。

「この前テ―マパークに付き合ってやったんだから、次は俺の案に乗るのが筋じゃないですかぁ～？」

この時の、「策に嵌めたった！」と言わんばかりのスケベったらしい笑い方が、本っ当に気持ち悪かった。
この前のウエストポーチ姿も思い出してしまって、もう本当に気持ち悪かった。

彼の中では、テーマパークでのあの最悪な態度は素やったんかい……。
彼女を海に連れて行くための先行投資の撒き餌デートで、あの態度やったんかい……。

「彼氏可哀想！」って思われる方も多いでしょうが、海には行かずに別れました。