某イタリアンレストランで働いてた時のこと。その日はクリスマスでずっと俯いて固まったままの女性がいた。

某イタリアンレストランで働いてた時のこと。
その日はクリスマスでフロアは早くから満席でした。
多くのカポーが「幸せ・・・」ってな感じで食事を楽しむ中、
早々に席を立ち支払いを済ませ、お店を出た男性が一人。
女性の方はうつむいたまま動かず。どうも女性は振られたようです。

そこそこイイ値段のお店でしたんで、幸せそうなカポーは
たくさん見てきましたが、こういう展開は正直不慣れでした。
案の定、というか男性は閉店になっても戻って来ず
女性は固まったまま。僕はなんと言っていいかわからず
努めて事務的に「閉店時間ですので・・」とだけ言いました。

女性はやっと顔を上げ、「はい、ごちそうさまです」
と無理矢理な笑顔で答えました。
女性の目は薄暗い照明の中でもはっきりとわかるほど真っ赤でした。

ちょっと休憩( ´ー`)ﾌｩｰ．．．

僕はそんな健気な女性を見て、相手の男性に少し腹が立ちました。

「わざわざ高い飯を食いにきて、しかもこんなタイミングで振るなんて・・」

周りは幸せそうなカポーばかり。そんな中で一人残される女性のことを
男性は考えたのでしょうか。
僕は女性を送り出しながら何か言わずにいられませんでした。
「何かいいことありますよ。・・・メリークリスマス」
営業トークとはワケが違います。本当に傷ついた人にかける言葉は難しいと思いました。
内心、女性はムカついたと思いますが、「ありがとう」と言ってドアを出て行きました。

なにはともあれノーゲスト。僕はさっきの女性のことを考えながら閉店作業
に入りました。
フロアは片付け、後は鍵を閉めるだけ、と外に出ると・・なんとさっきの女性が
まだお店の前にいます。携帯でなにやらもめてる様子。
しかも口調が・・・なんか怖い・・
「いいから来いっつてんだよ・・あ？」
ヒステリックに叫んでるならまだわかります。
女性の声にも顔にもまったく表情がありませんでした。

( ´ー`)ﾌｩｰ．．．休憩しますよ。。

僕は女性を見ないように施錠を終え、店内に引き返しました。
まず間違いなく電話の相手はさっきの男性でしょう。
来い、というのは「ここ」に来い、ということでしょうか。
修羅場が「ここ」で展開するのでしょうか。
僕はさっきまでの感情はどこへやら、「他所でやってくれよ・・」なんて考えていました。

すべての作業が終わり、クリスマス定例の「お疲れ様の乾杯」が始まりました。
今年は・・今日は・・そんな話をしながらワインを飲みます。
疲れと酔いから、僕は厨房の人にさっきの話をしてしまいました。
「・・・でね、その人さっき見たら、まだお店の前にいるんですよ」
「へぇー」
「怖いのがね、その人電話してたんですけど・・」

そのときでした。
叫び声が。

飛び出した僕が見たのは想像以上の修羅場でした。
路上で男性に馬乗りになり首を絞める女性。男性はぐったりしていました。

後にも先にもこのときだけです。１１０番押したのは。
あれから少し、女性に優しくなった気がします。

う、すまん。
話はちゃんと最後まで聞いてから
カキコすべきだったかな。

いや、やっぱ
別れ際って大事よね（汗）