部下が無断欠勤したので様子を見に行ったらﾀﾋんでた。あまり悲しいとは思えなかったし涙も出なかった。自分は冷たい人間だと思った。でも…

　部下が無断欠勤したので様子を見に行ったら、ﾀﾋんでた。

玄関のドアを何度も叩いても出ないし、鍵がかかったままだったので管理会社に頼んで
玄関を開けてもらったんだが、彼は玄関に倒れてて。
一瞬見ただけで、「ﾀﾋんでるな」と冷静に思えて。

「変ﾀﾋ」扱いなので警察で事情聴衆とかされて、家に帰ったのは夜中の１時頃。
奥さんに「部下がﾀﾋんじゃってさ」とか話しながら淡々とシチューを食べた。
あまり悲しいとは思えなかったし、涙も出なかった。
俺は自分は冷たい人間だと思った。
ただ、食べながら「彼はもう食べることができないんだな」と思った。
「食べるどころか、何一つできないんだな」と思った。

翌日、警察に行って「ﾀﾋに至る不整脈」というなんだかよく分からないﾀﾋ因を聞いた。
脈が常時120前後を打つほど早くなって、体が耐えられなくなるとかなんとか。
詳しくは聞かなかった。
「ﾀﾋんだ」という事実は変わらないので。

でも「玄関でﾀﾋんでたんだよな」と思って。
どうして玄関だったんだろう。
ひょっとして苦しくてもがいたんだろうか？
助けを呼ぼうとして玄関に行ったんだろうか？
そこで力尽きたんだろうか？

そこまで考えて涙が出てきた。
涙が止まらなかった。

彼がﾀﾋんで今年で三年目。
今年も墓参りに行きます。